エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 誰かが後ろから美月を羽交い締めにした。それが誰かを確かめることもせずに、美月はめちゃくちゃに暴れた。

「放してよっ、お母さんを助けなきゃ」
「こらっ。そっちに近づいちゃダメだ」

 子どもが騒いでいるのに気がついて、大人が何人かやってきてしまった。

 自分を止めたのが晴馬だと知ったのは、大人たちに現場から遠ざけられてからのことだった。距離が離れても、暗い空に竜巻のような煙がのぼっていくのがはっきりと見える。

(大丈夫、きっと誰かが助けてくれたはず。お母さんは必ず私のところに帰ってくる。だって、これまで帰ってこない日なんてなかった。いつも笑顔で私を出迎えてくれて……)

 信じて待ち続けたけれど、どれだけ経っても月子は帰ってこない。

「……美月」

 彼に呼びかけられて初めて、晴馬がずっとそばにいてくれたことに気がつく。

 晴馬の声は震えていて、彼だって大きなショックを受けているのは見て取れた。だけど……うねるような負の感情を抑えることはできなくて……。

 美月は憎悪のこもった瞳で彼をキッとにらむ。

「晴馬なんか大嫌い! どうして邪魔したのよ? 私には……お母さんしか……ずっと一緒だったのに。一緒にいたかったのに、どうしてっ」

 それ以上はもう言葉にならず、美月は地面に泣き崩れた。

 月子はこの火事で亡くなった。
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