エリート消防士は揺るがぬ熱情で一途愛を貫く~3か月限定の妻なのに愛し囲われました~
 窓側を向いてみた美月はくるりと晴馬を振り返る。

「本当だ」

 窓に肘をついた体勢で、晴馬は外をのぞく。彼の身体の下に美月はすっぽり隠れてしまった。予想以上に近づいた距離に、美月の顔がかっと赤くなる。

(晴馬、大きいから……なんか抱きすくめられているみたいで……)

 それに、こちらを見おろす瞳がやけに色っぽくて、魅入られたみたいに目がそらせなくなった。

「美月」

 自分を呼ぶ彼の声に背筋がぞくりとする。ドクンドクンと跳ねる自身の心臓の音だけが聞こえる。

「今日、付き合ってくれてありがとう。楽しかった」

 甘いほほ笑みに、どうしようもなく胸が締めつけられる。美月の頭のなかに警鐘が鳴り響く。

(ダメだよ。私のこの反応、まるで晴馬に……)

 ついさっき、自分をいましめたばかりなのに。

『俺、結婚する気ないんだよ。今は……とかじゃなくてずっと』
『仕事として割り切れる人間に協力してほしい』

 いつか、彼に言われた台詞が蘇る。晴馬はビジネスとして妻を演じてくれる女性を求めていただけ。その事実が美月の胸をツキンと刺す。

(そうよ、これは仕事。余計な気持ちは、きっと必要とされていない)

 浸食するように広がっていく痛みに気づかないふりをして、美月は彼に向き直った。

「こちらこそ。予行演習はばっちりだし、明日はがんばろうね」

 彼の顔が少し寂しげに見えたのは……きっと自分がそう思いたいだけなのだ。

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