環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました

「ふーん。ホントにマネージャーやってんだ」
 会社の休憩室でコーヒーを飲んで一息ついていた美知華は、背後からそう声をかけられ一瞬にして気持ちが下がった。
 元カレの道弘がそこにいたからだ。
「……お陰様で楽しくやってます」
 ここが会社であることを忘れないよう、ギリギリの理性を保ちながら、美知華は冷ややかな声でそう返す。
 道弘は美知華の傍に立つと、ニヤニヤと、何とも言えないいやらしい笑みを浮かべていた。
「なん……ですか?」
 沈黙とその笑い方が気になり、美知華は不機嫌な物言いで訊ねる。
 そもそも常務が、わざわざ部下でもない社員に執拗に迫ること自体がおかしいのだ。
 発言の内容によっては、道弘より上の役職の人に言い付けてやろうかと美知華は考えていた。
 しかし、道弘の口から出てきた言葉に美知華は何も言えなくなる。
「『イケリウム』のアクアってやつと付き合ってるんだって?」
「なっ……」
 当然、二人が付き合っていることは秘密にしてある。
 とくにアクアは、配信者としてアイドルのような立ち位置なため、付き合っていることを公にするのはまだ控えるべきだということになった。
 当の本人は今すぐにでも公にしていいというところだったが、会社からのNGだったのでさすがのアクアも大人しくすることにした。
 そんな情報を、道弘はどうやって嗅ぎ付けたのか。
 実のところ、道弘はアクアと美知華が付き合っていることに対する決定的な証拠は掴んでいなかった。
 つまりカマをかけてるわけだが、美知華がそれを知るよしもない。
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