環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました
「あ、アクアくん……」
 美知華の声につられてアクアは目の前の状況を改めて視野に入れる。
 スーツを着た男が、美知華の腕を掴み、美知華を泣かしている。
 それだけでアクアは怒りのボルテージが上がるのを感じた。
「てめぇ……!」
「ははっ、落ち着けよ」
 思わず掴みかかろうとしていたアクアに対し、道弘はあくまで余裕を持った態度で制止をかける。
 その間に道弘から手を離されたので、美知華は急いでアクアの背後へと移動した。
「ふーん、やっぱりそうなんだ」
 美知華を庇い、怒りを見せるアクアを前にし、道弘は二人が付き合っている確信を得た。
「自分の女、マネージャーにして可愛がるとか、最近の配信者ってやつは随分勘違いした権力があるもんだな」
「何が言いたいんですか?」
「常務命令で、佐伯美知華をまた広報に戻してやろうか」
「そんなっ……」
 道弘の言葉に反応したのは美知華の方だった。
 アクアは冷静になったのか、実に冷ややかな視線を道弘に向けている。
「それこそ常務の権限でどうにかできることなんですか?」
「俺の彼女は専務の娘だからな。それに、おまえらが付き合ってるって世間にバラしたっていいんだぜ?」
「美知華さんがマネージャーになることは会社も認めていることだし、俺たちのことについては何の関係も無いだろ」
「どうかな? マネージャーを激励してたらしい副社長あたりに、おまえらが付き合っていることを伝えればどう思うだろうなぁ。公私混同でお咎めがあるかも」
「………」
 アクアは口を閉ざし、美知華は奥歯を噛み締めた。
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