環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました

(なんでこんなことに……! 元カレってだけでなんでこんなことまでしてくるの……っ? どうしよう。アクアくんだけでも助けなきゃ。でもそれって、私たち、別れるってこと……?)
 最悪な想像へと行き当たり、美知華は顔を青くする。
 それでもこの場を……道弘を切り抜けるためにはそれしかないのかもしれないと思った、その時だった。
「まずそもそも、俺たちが付き合っていることを外部に漏らすのは、会社に不利益をもたらす行為ですよね? しかもそれを脅迫の材料に使っているのも見過ごせない」
 冷淡で事務的な物言いだった。
 アクアが、まるでアクアではないように印象をガラリと変え、道弘を糾弾していく。
「また、推測ではありますが、一人の女性社員に迫る貴方の態度はハラスメントに該当すると思います。これは美知華さんに、貴方から何をされたかの事情聴取をしてからの話になりますが」
「な、なんだよおまえ。今はそんなの関係……」
「それと、副社長は『イケリウム』のアクアとマネージャーの佐伯美知華の交際を、直々に認めていますよ」
「はあ? なんでおまえごときが副社長の言葉を知ってんだ」
「俺の本名が水波(みずなみ)悠斗(ゆうと)だ、って言えば理解できますか?」
「……は?」
 ピシッと音を立て、道弘は面白いぐらい全身を固まらせた。
 一方、アクアの後ろにいる美知華は首を傾げた。
(アクアくんの本名ってそうだったんだー! って、じゃなくて。水波……水波……なんか聞いたことある気がするっていうか……。あー、そうだそうだ。うちの会社の副社長の名前……えッ?)
「アクアくん、うちの副社長だったのッ?」
「ピンポーン。美知華さん大正解」
 さっきまでの冷めた様子から変わり、いつものアクアに戻っていた。
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