環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました

 アクアは苦笑を浮かべる。
「本当は明かす気無かったんだけどね。あんまりこの人がしつこいからさ」
「で、でも副社長って……う、嘘ぉ!」
「ホントだよ。この会社だって親父に、これから配信者の時代が来るからそういう会社を作ろうって提案したところから始まってるんだ。だから親父は社長だけど、実際色んな決定権出してるのは俺だったりする」
「は、はぇ~……」
 あまりにも予想外のことに、美知華も固まってしまいそうだった。
「……幻滅した?」
「え?」
 アクアから突然そう言われ、美知華はキョトンとした表情を浮かべる。
「なんていうか……配信活動を金持ちのボンボンのお遊びって思われたくなかったんだ。だから副社長ってことも黙ってたし、『イケリウム』をあそこまで有名にするためにがむしゃらに頑張ってきたんだ」
 なんとなく、アクアの言いたいことがわかった。
 おそらくアクアを副社長だと知る人たちは、裏でそういうことを言っていたのだろう。
 だけどそんな人たちを見返すことができるほど、今のアクアたちは立派な有名配信者だ。
「胸を張って、アクアくん。副社長だとか関係無く、アクアくんはプロだよ」
「美知華さんはまた俺を元気づけてくれるんだね……ありがとう」
 見つめ合い、イイ雰囲気になる二人。
 しかし、まだ固まっている道弘の存在を思い出し、二人はとっとと休憩室から移動した。
 自分がどれだけ馬鹿げた発言をしていたか、道弘は思い知っただろう。
「でももし、またあの男が何か言って来たらそっこー俺に言ってね。クビにするクビに!」
「く、クビって……。まあ、その時は頼らせてもらうね」
「うん。彼氏の俺に頼って」
 どうやら元カレの道弘の存在が気に食わないのか、『彼氏の俺』の部分が強調されていた。
 さっきまでの毅然とした態度とギャップがあり、美知華は思わず笑ってしまう。
< 33 / 35 >

この作品をシェア

pagetop