男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
 ディスプレイを見ると、そこにはお母さんの名前が表示されていた。

 ……タイミングが最悪すぎる。

 そして、出るべきか出ないべきか。すごく、迷った。

(どうせ、さっきのお話の続きだろうし……)

 そもそも、私は今、丞さんといる。そのうえで、電話の相手はお母さん。

 ……別に、後からかけ直しても問題ないだろう。

「出ないんですか?」

 丞さんが、心配そうに私に声をかけてこられる。

 なので、私は曖昧に頷いた。

 そうすれば、少しして呼び出しのバイブレーションが止む。私は鞄にスマホを放り込んだ。

「俺に遠慮したなら……」
「そ、そういうわけでは、ないです……」

 ゆるゆると首を横に振って、私は曖昧に笑った。

「相手、お母さんなので」

 肩をすくめてそう伝えれば、丞さんは一瞬ぽかんとされていた。でも、すぐに「あぁ」と声を上げられる。

「入院されているっていう……」
「はい、そうです。……ここに来るまで、ちょっとお話してて。その続きだと、思うので」

 正直、話の内容は丞さんの耳にはいれたくない。
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