男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
 移動している最中、彼は私の隣に並んでくださった。背丈も高いので、彼の歩幅はかなりのものだと思う。でも、彼は私に合わせて歩いてくださる。……好感度が、高い。

「あ、その。お店の予約、お任せしてしまって申し訳ございませんでした……」

 あぁ、そうだ。こういうものは秘書がするものなのだ。

 そう思って、慌てて謝罪をすれば丞さんはゆるゆると首を横に振られる。

「知り合いの店なので、俺が電話したほうが早いんで。気にしないでください」
「……はい」

 しかし、そう言われたら黙るしかない。

 私はアスファルトに視線を向けて、歩く。どういう風に彼を見たらいいかがわからなくて、俯き続けた。

「差支えがなかったら、聞きたいことがあるんですが」

 目の前の歩行者用の信号が赤になって、立ち止まったとき。ふと、丞さんがそう声をかけてこられた。

 私は彼の横顔を見上げて、こくんと首を縦に振る。

「杏珠さんって、恋人とか、好きな人とか。そういう人、いますか?」

 ……が、彼の問いかけが予想の斜め上だった所為で。私はぽかんとする。

 助けを求めるように歩行者用の信号を見るけれど、まだ赤のままだ。
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