疫病神の恋
「会社に近い賃貸が、ファミリー向けしか空いてなかったんです。なので使っていない部屋があります。そこを自由に使ってください」
「でも……」
「あ、内側から鍵もかけられます。お風呂やトイレは共用になってしまいますが……絶対にあなたが嫌がるようなことはしないと誓います」
「違うんです、そうじゃなくて……」

 自分に女性的な魅力があるとは思っていない。ましてや、彼であればいくらでも素敵な女性と出会うことができるだろう。心配するのはそこではなくて——

「わたしは……、疫病神なんです」

 こんな荒唐無稽な話、本当はしたくなかった。
 でも、彼を不幸に貶めるくらいならば、引かれる方が余程いい。

 幸は、これまでのことを包み隠さず話した。


「——それで、ずっと一人でいたんですか?誰にも怪我をさせないように……?」

 こくりと頷く。

「そんなのは不幸が重なっただけで、あなたのせいじゃない!」
「そうかもしれません。でも、そうじゃないかもしれない……」
 今回の火事だって、自分のせいなのではないかと、心のどこかで考えてしまう。
「それに、一緒に暮らしていた従姉妹に言われたんです」

 ——この疫病神!あんたが不幸を撒き散らしているのよ!
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