疫病神の恋
「さっきより人が増えてきましたね」
人混みに慣れていない幸は、一歩進むごとに誰かにぶつかってしまうような状態だ。
悠生が、そっと手を差しだしてくる。
「ん?」
その手の意味が分からず小首をかしげる幸にの前で、優しく何かを掴むようにグーパーを繰り返す大きな手。
「はぐれるといけないので、手をつなぎませんか?」
意味が分かった瞬間、まだつないでもいないのに、手に熱が集中したように熱くなった。
異性と手をつなぐなんて、小学生の時のダンスの授業以来だ。でもこれは、そういうのとは意味が違う。
ひどく緊張する。逃げ出したいほど恥ずかしい。
なのに、つないでみたい、と思った。
——その手に、ふれてみたい……
躊躇いながら、ゆっくりと彼の手に自分の手を寄せていく。
指先が震える。
あと数センチでふれあう。そのとき——
「幸……?」
びくりと幸の手が弾けた。ふれあうはずだった手は引っ込められて、二人の間に距離ができる。
数年ぶりに聞く声。
「桃香……」
叔父の娘。三年と少し、一緒に暮らした従姉妹。
「一緒にいるのは恋人?」
桃香の両隣には、中学の時のクラスメイトもいる。
心が、一気に昔に引き戻される。
震える喉から必死に声を絞り出した。
「ひ、久しぶり、元気そう…だね。叔父さんと叔母さんも元気にして——」
「まさか幸が、彼氏とショッピング?」
幸の言葉を遮って、桃香が悠生との関係を再び問いかけてくる。
「彼は同じ会社の人で、いろいろとお世話になってて……」
「そっかぁ。うん、そうだよね。あの幸が誰かと付き合ったりなんてしないよね」
急激におなかの奥の方から気持ち悪さが込み上げてきて、その場にいられなくなった。
「すみません、ちょっと人酔いしたみたいで……。少し休んできます」
人波をかき分けて、一人でその場から逃げ出した。
とにかく自分の心を保つのに精いっぱいだった。
その後どうやって悠生と合流したのか、どうやって家までたどり着いたのか、あまり覚えていない。
人混みに慣れていない幸は、一歩進むごとに誰かにぶつかってしまうような状態だ。
悠生が、そっと手を差しだしてくる。
「ん?」
その手の意味が分からず小首をかしげる幸にの前で、優しく何かを掴むようにグーパーを繰り返す大きな手。
「はぐれるといけないので、手をつなぎませんか?」
意味が分かった瞬間、まだつないでもいないのに、手に熱が集中したように熱くなった。
異性と手をつなぐなんて、小学生の時のダンスの授業以来だ。でもこれは、そういうのとは意味が違う。
ひどく緊張する。逃げ出したいほど恥ずかしい。
なのに、つないでみたい、と思った。
——その手に、ふれてみたい……
躊躇いながら、ゆっくりと彼の手に自分の手を寄せていく。
指先が震える。
あと数センチでふれあう。そのとき——
「幸……?」
びくりと幸の手が弾けた。ふれあうはずだった手は引っ込められて、二人の間に距離ができる。
数年ぶりに聞く声。
「桃香……」
叔父の娘。三年と少し、一緒に暮らした従姉妹。
「一緒にいるのは恋人?」
桃香の両隣には、中学の時のクラスメイトもいる。
心が、一気に昔に引き戻される。
震える喉から必死に声を絞り出した。
「ひ、久しぶり、元気そう…だね。叔父さんと叔母さんも元気にして——」
「まさか幸が、彼氏とショッピング?」
幸の言葉を遮って、桃香が悠生との関係を再び問いかけてくる。
「彼は同じ会社の人で、いろいろとお世話になってて……」
「そっかぁ。うん、そうだよね。あの幸が誰かと付き合ったりなんてしないよね」
急激におなかの奥の方から気持ち悪さが込み上げてきて、その場にいられなくなった。
「すみません、ちょっと人酔いしたみたいで……。少し休んできます」
人波をかき分けて、一人でその場から逃げ出した。
とにかく自分の心を保つのに精いっぱいだった。
その後どうやって悠生と合流したのか、どうやって家までたどり着いたのか、あまり覚えていない。