疫病神の恋
 連れて来られたのは、高級そうなホテルの個室レストランだった。
 気後れして躊躇っていると、背中に手を当てられ「大丈夫ですから」と店内に(いざな)われる。
 今日は何故だかずっと強引で、彼らしくないと思った。

 店の最奥の個室を悠生がノックをすると、中から「はい」という女性の返事が聞こえ、どくりと心臓が跳ねた。

「遅れてすみません。失礼します」
 彼が、いつもよりも固い様子で扉を開ける。
 おそるおおそる中に入ると、先客が驚いたように目を見開いた。

「どうして幸がここにいるのよ!」
 ガタッと椅子が鳴り、反射でびくりと肩を竦める。
「落ち着いてください。僕が無理を言って連れてきたんです。どうしても、確認しておきたいことがあるんです」
 すっと彼が幸の前に出て、桃香との間で壁になってくれる。まるで、守ってくれているように。
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