疫病神の恋
【side 悠生】

 仕事にはやりがいを感じている。
 積み重ねた努力が成果に現れれば達成感を覚えるし、他人から認められることは単純に嬉しい。

 けれど、いくら己の努力の賜物だと思っていても「顔がいいやつは得だよな」とか「身内のコネだろう」と揶揄する声が聞こえてくれば、そうなのかもしれない、と自分で自分が信じられなくなる。
 その日も、必死に取ってきた契約を「どうせ親の力だろ」と陰で噂されているのを聞いてしまった。

 このままこの場所で働いていていいのだろうか。
 自分の力だけで認めてもらいたい。
 そう考えるようになっていた。

 そんなときだった。珍しく十個年の離れた従兄(いとこ)の鈴木 篤から食事に誘われて、相談のようなものを持ちかけられたのは。
 篤は、母の姉の子で、幼いころはよく遊んでもらっていた。


「とても有能なのだけれども、鉄壁のバリアを張っていて、ひとり浮いている子がいるんだ」

『良い職場は良い人間関係から』が基本なのに、と篤が嘆く。

「虐められてるんですか?」
「それはない。ただ、わざと自分から孤立してる様子でね」
「本人がそれを望んでいて周りも許容しているのなら、問題ないのでは?」

「きっと彼女は、一人でいたいわけではないはずなんだ」
「……篤さんは僕になにを求めているんですか?」

 話は早いと言わんばかりの顔で微笑みかけられる。

「四月から支社に来てくれないか?彼女の心の鍵を開けてほしい」
「どうしてご自身でなさらないんです?」
「私が彼女ひとりに目をかければ、あらぬ噂がたってしまうかもしれない」

 確かに、年の離れた女子社員に過剰に接触するのは、いろいろとよろしくないだろう。
「……わかりました」
 悠生としても、試しに環境を変えてみるのも、悪い話ではないと思った。
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