弟は離れることを、ゆるさない


琴音の唇はひんやりと冷たかった。


潤んだ瞳は恐怖で怯えているようにも見える。多分、キスも初めてなんだろう。


そんな顔すんな、俺だってキスは琴音が初めてなんだから。今までいろんな女を抱いたけど、キスだけはする気になれなかった。


それはずっと琴音が頭の片隅にあったからだ。


初めてのキスは大切にしたい人と、自分の気持ちをぶつけるような、そんな口づけをしたかった、俺の最後の抵抗だった。


琴音の頭に手を当て、自分の元へ抱き寄せる。


――もっとキスしたい。
もっと、頭の中が俺で埋まってしまうくらい、抜け出せないような、そんな激しいキスがしたい。


泣き出しそうな琴音に、吸い付くようなキスを繰り返す。


最低な弟でごめん。

――けど、どうしようもなく興奮している。

――今死んでもいいくらい幸せだ。


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