弟は離れることを、ゆるさない
金髪の男の子は「さー入って入って」と私の肩を押しながら葵を呼んだ。
「葵ー、次はこの先輩の相手してやってー!」
そう叫んだことによって葵の視線が私に向けられる。
「ああ、そうそう。アイツとはキスまでで勘弁してくださいね。アイツここんとこずっと勃ちが悪いみたいなんで本番は無しで。続きしたかったら俺が相手しますんで」
金髪男子は私の体を舐め回すように見た。
「いい身体してるんですね。俺、今からすげぇ興奮してきました」
耳元で発せられる吐息がイライラを加速させていく。葵は私に向かって、
「なんの用だよ、姉ちゃん」
――と叫んだ。
「姉ちゃん」まさかこんな場で、数年ぶりに聞くとは思わなかった。皮肉たっぷりに呼ばれたことは分かる。葵が姉ちゃんと呼んだことで、他の人達全員の視線が私に注がれた。
金髪男子も焦った様子で「え!?葵の姉ちゃん?」とバツが悪そうな顔をしている。