弟は離れることを、ゆるさない
その日の夜、葵と話せたのが嬉しくて紗絵に弟と三年ぶりに話したというLINEを送り、布団の中で意識が遠のいていった。
――久しぶりに夢を見た。
まだ一緒に遊んでいたとき、葵は私のことを「姉ちゃん」と呼んでくれていた。けれど成長すると同時に葵が私を呼ぶ、呼び方も「琴音」に変わった。
なんで「姉ちゃん」から「琴音」に変わったのか、その理由は未だにちゃんと聞けていない。
夢の中の葵は、かわいい葵から今の葵に姿を変えた。
葵は何故か熱い眼差しを私に向け、ベッドに押し逃げられないように手首を掴む。
家族が留守中に、同級生の女の子をよく連れ込んでいた葵。女の子を抱くところも何度も目にしたことがある。
耳を塞ぎ、タオルで目隠しをし、口をガムテープで塞ぐ。女の子からの音が一切出ないように、そうやって女の子を抱いていた。
まるで性の捌け口のように抱く葵の抱き方は怖かった。あの光景を忘れたことは一度もない。
恐怖概念からだろうか、夢の中の葵に私は同じことをされていた。
目を隠し、口を覆われ、耳を塞がれる。葵の骨ばった手が私の頬に優しく触れ、唇を舌で舐められたリアルな感触により目が覚めた。
「――っ、はあっ、はあっ」
息を整え周りを見渡す。薄暗い視界の中に葵の姿はなく、再び眠りについた。