言葉足らず。
「まあ、あと、」

 でも、と、食い下がる私に、柔らかなテノールで先生は続ける。

「真野さんと、珍しくゆっくり話せたので。」

 きっといつもと同じ、先生の気まぐれ。それでもほとんどぴたりと私と同じことを思っていてくれたのが、少しだけ、本当にちょっとだけ、嬉しい。

「でも、この辺にしとくね。さすがに家知られるのは嫌でしょ。」
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