言葉足らず。
角を曲がれば、目と鼻の先。住んでいるところを知られるのが嫌なわけではないが、単身用の殺風景な家なので見られるのもどうなんだろう、と思ってここで別れることにする。
「ありがとうございました、遅い時間に。」
「じゃあ、また明日?」
「また明日、ですね。」
勤務は不規則で、平日がお休みだったり世間的な休日が出勤だったりする。だからたぶん先生も疑問形で言ってくれたのだと思うのだけれど、幸か不幸か明日もちゃんと日勤である。
そしてついでに同じ日勤でも先生には会えたり会えなかったりするので、“また明日”、先生に会えるかどうかはわからない。
そのあたりはきっと、言葉のあやというか、そんなところだろう。
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
頭を下げながら言うと、先生は片手を上げてそう応えつつ私に背を向けて歩き出した。私も自分の家に向かって方向転換をして、だけどほんの少し名残惜しくなって先生の背中を見やる、と。
ほぼ同時に、先生がちらりとこちらを振り返る。私は慌ててぺこりと頭を下げると、先生もまた笑いながら片手を上げる。
病院で見るみたいな、お仕事モードの愛想笑いというか、作り笑顔じゃなくて。あまりに子どもみたいに、楽しそうに笑うから。
本当にこのひとは、10も歳上なのかと疑いたくなる。
「ありがとうございました、遅い時間に。」
「じゃあ、また明日?」
「また明日、ですね。」
勤務は不規則で、平日がお休みだったり世間的な休日が出勤だったりする。だからたぶん先生も疑問形で言ってくれたのだと思うのだけれど、幸か不幸か明日もちゃんと日勤である。
そしてついでに同じ日勤でも先生には会えたり会えなかったりするので、“また明日”、先生に会えるかどうかはわからない。
そのあたりはきっと、言葉のあやというか、そんなところだろう。
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
頭を下げながら言うと、先生は片手を上げてそう応えつつ私に背を向けて歩き出した。私も自分の家に向かって方向転換をして、だけどほんの少し名残惜しくなって先生の背中を見やる、と。
ほぼ同時に、先生がちらりとこちらを振り返る。私は慌ててぺこりと頭を下げると、先生もまた笑いながら片手を上げる。
病院で見るみたいな、お仕事モードの愛想笑いというか、作り笑顔じゃなくて。あまりに子どもみたいに、楽しそうに笑うから。
本当にこのひとは、10も歳上なのかと疑いたくなる。