言葉足らず。
 もう日付は変わって、20分ほど経つけど。今日も、朝から仕事だけど。そんな憂鬱、ぜんぜん感じさせないくらい。気分が、ふわふわしていた。
 …本当は、心のどこかでわかっていたのに。私に“幸せ”なんて気持ち、まったくもって似つかわしくないと。
 だから余韻に浸る間もなく着信を告げるスマートフォンのディスプレイに現実に引き戻されても、「ああ、またか。」って、それしか思わなかった。

 “非通知設定”。

 その文字列に、いちいち憂鬱になることも面倒くさくなってくる。

 あと、7コール。耐えたら、切れるから。

 私は右手にスマホを持ったまま、左手で上着のポケットから部屋の鍵を取り出した。
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