本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第20章 5 大事な話
結局、その日の夜はお姉ちゃんが見ていたブライダル特集のページと意味深な言葉が気になって、あまり眠れなかった。
そして翌朝――
「う~ん……」
いつに間にか眠っていたらしく、不意に目が覚めた私は急いで飛び起きるとスマホを開いて時間をチェックした。
「え……? 嘘っ!? 7時過ぎてるっ! 急いで起きなくちゃ!」
布団から飛び起きると、枕元に置いておいたジーンズとスウェットに着替えて急いで階下に降りた。既に1階からは美味しそうなお味噌汁の匂いが漂っている。
「お姉ちゃん!」
リビング兼、ダイニングルームに入った途端――
「よぉ。おはよう、鈴音」
何と亮平がテーブルで朝ごはんを食べていた。亮平の前にはご飯、お味噌汁、だし巻き卵に焼き鮭、胡瓜と株の浅漬けが乗っている。
「え……? ええっ!? ど、どうして亮平がここで朝御飯食べているの!?」
「フフフ。私が呼んだのよ。折角鈴音ちゃんが家に来ているんだから。皆で朝ごはん食べる物良いでしょう?」
お姉ちゃんがお盆に私と自分の分の料理を乗せて運んできた。
「あ、お早う、お姉ちゃん。ごめんね? 早起きして朝の手伝いしようと思っていたのに」
「あら、いいのよ? だって鈴音ちゃんは普段お仕事して働いているじゃない。休みの日位、のんびりして欲しいから家に呼んだのよ?」
言いながらお姉ちゃんはお盆の上の料理を次から次へと並べていく。
「さ、鈴音ちゃんも食べて」
「う、うん。ありがとう…」
亮平の向かい側に座ると、早速私に話しかけて来た。
「全く、寝坊助だよな~鈴音は」
亮平は豆腐と若芽の味噌汁を飲む。
「だ、だって……しようがないじゃない。昨夜は……その、あんまりよく眠れなかったんだもの」
「まぁ、そうだったの? ならもっとゆっくり寝ていれば良かったのに」
「まさか! そんなおちおち寝てなんかいられないよ。いただきます」
手を合わせると慌てて私は厚焼き玉子を口に入れた。ほんのりお出しの利いたフワフワの厚焼き玉子。私の大好きな味だ。
「うん、美味しい~」
「そうね。皆で食べると美味しいわよね。こうして朝から皆で食卓を囲むってまるで家族にでもなったみたいな感じがするわ」
「う! ゴ、ゴホッ!」
その言葉にご飯を口に運んでいた私は思わずむせそうになり、慌ててお味噌汁を飲んだ。お、お姉ちゃん……家族って? 私の脳裏を昨夜の出来事がかすめた。
「キャア! 鈴音ちゃん、大丈夫?」
お姉ちゃんが慌てて背中をさすってくれた。
「おいおい、大丈夫か? そんなにかっこんで食べるから詰まらせそうになったんじゃないのか? 余程腹減ってたんだな?」
「ち、違う。そんなんじゃないってば」
「じゃあ何だよ?」
亮平は焼き鮭をほぐしながらチラリと私を見た。そんな……口に出して言えるはずないでしょう? 2人がもうすぐ結婚するかもしれないから、それを示唆するような事をお姉ちゃんが言ったからだって。
「う~……何でもない」
そして私は炊きたてご飯を口に入れた――
****
「それじゃ、亮平君。行ってらっしゃい」
「……行ってらっしゃい」
今、私達は全員玄関前に来ていた。出社する亮平を見送る為だとかで……。何故こんなことを……。お姉ちゃんが1人で見送ればいいのに何故か2人から私まで駆り出されてしまった。
「はい、行ってきます。忍さん」
亮平は笑顔でお姉ちゃんに挨拶している。もう、お見送りならお姉ちゃんだけで十分でしょう? これじゃ私どうあってもお邪魔虫だよ。
すると不意に亮平が私に声をかけてきた。
「鈴音、そう言えば今夜は何時にマンションへ帰るんだ?」
その言葉にお姉ちゃんも私を見る。
「う~ん。夕方には帰るよ」
「え? そんな。夜御飯位食べて帰ってよ。今夜は炊き込みご飯にけんちん汁を作るんだから」
「お? うまそう。いいですね~」
亮平は笑顔で返事してる。まさか夜御飯もここで食べていくつもりなのかな? 確かに炊き込みご飯とけんちん汁は魅力的だけど……正直、あまり長居はしたくなかった。2人が私に隠し事をしているかと思うと、どうにも壁を感じてしまう。私が壊せない、どうする事も出来ない厚い壁が。
「鈴音。お前の好きな炊き込みご飯とけんちん汁だぞ? 食ってから帰れよ」
亮平はまるで我が家の様に振る舞う。
「どうせ冷蔵庫の中にはまともな食糧入ってないんだろう? 全く……だからいつまでもガリガリなんだよ」
私の事を頭から足のつま先までジロジロと亮平が見た。
「まぁ、やっぱりそうなのね? だったら食事して帰りなさいよ」
「う、うん……」
やっぱり私は駄目だ。お姉ちゃんに言われると断れない。
「よし、決まりだな。夜にまた来ますね」
亮平はお姉ちゃんに言うと、今度は私を見た。
「鈴音……」
「な、何?」
「勝手に帰るなよ? お前に大事な話があるから」
え? 大事な話……?
ドクン
私の心臓が大きく鳴った。
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
お姉ちゃんが陽気に手を振る。
「……行ってらっしゃい……」
私も何とか声を出した。
バタン……
玄関の扉は閉ざされ、お姉ちゃんが話しかけてきた。
「それじゃ片付けて来るわね」
「う、うん……」
お姉ちゃんは足音を立ててリビングへと向かって行った。
「大事な……話……?」
気付けば、ポツリと口に出していた――
そして翌朝――
「う~ん……」
いつに間にか眠っていたらしく、不意に目が覚めた私は急いで飛び起きるとスマホを開いて時間をチェックした。
「え……? 嘘っ!? 7時過ぎてるっ! 急いで起きなくちゃ!」
布団から飛び起きると、枕元に置いておいたジーンズとスウェットに着替えて急いで階下に降りた。既に1階からは美味しそうなお味噌汁の匂いが漂っている。
「お姉ちゃん!」
リビング兼、ダイニングルームに入った途端――
「よぉ。おはよう、鈴音」
何と亮平がテーブルで朝ごはんを食べていた。亮平の前にはご飯、お味噌汁、だし巻き卵に焼き鮭、胡瓜と株の浅漬けが乗っている。
「え……? ええっ!? ど、どうして亮平がここで朝御飯食べているの!?」
「フフフ。私が呼んだのよ。折角鈴音ちゃんが家に来ているんだから。皆で朝ごはん食べる物良いでしょう?」
お姉ちゃんがお盆に私と自分の分の料理を乗せて運んできた。
「あ、お早う、お姉ちゃん。ごめんね? 早起きして朝の手伝いしようと思っていたのに」
「あら、いいのよ? だって鈴音ちゃんは普段お仕事して働いているじゃない。休みの日位、のんびりして欲しいから家に呼んだのよ?」
言いながらお姉ちゃんはお盆の上の料理を次から次へと並べていく。
「さ、鈴音ちゃんも食べて」
「う、うん。ありがとう…」
亮平の向かい側に座ると、早速私に話しかけて来た。
「全く、寝坊助だよな~鈴音は」
亮平は豆腐と若芽の味噌汁を飲む。
「だ、だって……しようがないじゃない。昨夜は……その、あんまりよく眠れなかったんだもの」
「まぁ、そうだったの? ならもっとゆっくり寝ていれば良かったのに」
「まさか! そんなおちおち寝てなんかいられないよ。いただきます」
手を合わせると慌てて私は厚焼き玉子を口に入れた。ほんのりお出しの利いたフワフワの厚焼き玉子。私の大好きな味だ。
「うん、美味しい~」
「そうね。皆で食べると美味しいわよね。こうして朝から皆で食卓を囲むってまるで家族にでもなったみたいな感じがするわ」
「う! ゴ、ゴホッ!」
その言葉にご飯を口に運んでいた私は思わずむせそうになり、慌ててお味噌汁を飲んだ。お、お姉ちゃん……家族って? 私の脳裏を昨夜の出来事がかすめた。
「キャア! 鈴音ちゃん、大丈夫?」
お姉ちゃんが慌てて背中をさすってくれた。
「おいおい、大丈夫か? そんなにかっこんで食べるから詰まらせそうになったんじゃないのか? 余程腹減ってたんだな?」
「ち、違う。そんなんじゃないってば」
「じゃあ何だよ?」
亮平は焼き鮭をほぐしながらチラリと私を見た。そんな……口に出して言えるはずないでしょう? 2人がもうすぐ結婚するかもしれないから、それを示唆するような事をお姉ちゃんが言ったからだって。
「う~……何でもない」
そして私は炊きたてご飯を口に入れた――
****
「それじゃ、亮平君。行ってらっしゃい」
「……行ってらっしゃい」
今、私達は全員玄関前に来ていた。出社する亮平を見送る為だとかで……。何故こんなことを……。お姉ちゃんが1人で見送ればいいのに何故か2人から私まで駆り出されてしまった。
「はい、行ってきます。忍さん」
亮平は笑顔でお姉ちゃんに挨拶している。もう、お見送りならお姉ちゃんだけで十分でしょう? これじゃ私どうあってもお邪魔虫だよ。
すると不意に亮平が私に声をかけてきた。
「鈴音、そう言えば今夜は何時にマンションへ帰るんだ?」
その言葉にお姉ちゃんも私を見る。
「う~ん。夕方には帰るよ」
「え? そんな。夜御飯位食べて帰ってよ。今夜は炊き込みご飯にけんちん汁を作るんだから」
「お? うまそう。いいですね~」
亮平は笑顔で返事してる。まさか夜御飯もここで食べていくつもりなのかな? 確かに炊き込みご飯とけんちん汁は魅力的だけど……正直、あまり長居はしたくなかった。2人が私に隠し事をしているかと思うと、どうにも壁を感じてしまう。私が壊せない、どうする事も出来ない厚い壁が。
「鈴音。お前の好きな炊き込みご飯とけんちん汁だぞ? 食ってから帰れよ」
亮平はまるで我が家の様に振る舞う。
「どうせ冷蔵庫の中にはまともな食糧入ってないんだろう? 全く……だからいつまでもガリガリなんだよ」
私の事を頭から足のつま先までジロジロと亮平が見た。
「まぁ、やっぱりそうなのね? だったら食事して帰りなさいよ」
「う、うん……」
やっぱり私は駄目だ。お姉ちゃんに言われると断れない。
「よし、決まりだな。夜にまた来ますね」
亮平はお姉ちゃんに言うと、今度は私を見た。
「鈴音……」
「な、何?」
「勝手に帰るなよ? お前に大事な話があるから」
え? 大事な話……?
ドクン
私の心臓が大きく鳴った。
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
お姉ちゃんが陽気に手を振る。
「……行ってらっしゃい……」
私も何とか声を出した。
バタン……
玄関の扉は閉ざされ、お姉ちゃんが話しかけてきた。
「それじゃ片付けて来るわね」
「う、うん……」
お姉ちゃんは足音を立ててリビングへと向かって行った。
「大事な……話……?」
気付けば、ポツリと口に出していた――