本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
エピローグ 私と彼の結婚式 <本編完結>
「鈴音っ!」
直人さんの腕が伸びてきて、私をしっかりと抱きとめてくれた。
「直人さん……直人さん……!」
私は泣きながら直人さんの胸に顔を擦り付けた。この匂い……間違いない。直人さんだ……私の大好きな彼の匂いだ……。
「鈴音……今まで本当にごめん……!」
直人さんも泣いているのだろうか? 私の頭に熱いものがポタリと垂れた。しっかり抱き合う私達の背後で亮平の声が聞こえる。
「あ、あの〜鈴音……」
すると直人さんの弟さんの声が聞こえた。
「ほら、行きましょう。2人の邪魔しちゃ悪いですから」
そして足音が去っていくと、直人さんが私から身体を離した。
「鈴音……よく顔を見せてくれないか?」
「う、うん……」
涙で濡れた目をゴシゴシ擦って直人さんを見上げた。すると直人さんは私の頬を両手で挟み込む。
「うん、間違いない……俺の大好きな鈴音だ……」
「な、直人さん……」
そのまま顔を近づけてきたので、私は目を閉じると直人さんがキスをしてきた。
直人さん……。
教会の鐘が響き渡るまで、私達は固く抱きしめあったままキスをした―――
やがて、長いキスが終わると直人さんが言った。
「鈴音……。もう離れない。どうか俺と結婚して下さい」
勿論、私の返事は決まっている。
「うん……! 私を……貰って下さい!」
そして再び私達は抱きしめあってキスをした――
****
午前9時半――
慌ただしく、私と直人さんの結婚式の準備が進められていた。鏡の中に映る私は、あの時試着したウェディングドレスを身に着けて、頭には真っ白なヴェールを被っている。
「鈴音ちゃん。とっても綺麗よ」
鏡の中に紺色のセレモニードレスを着たお姉ちゃんが映った。
「お姉ちゃん……ごめんなさい。本当はお姉ちゃんと亮平の結婚式だったのに……」
私を着付けてくれたスタッフの人達だって、きっと戸惑ったに違いない。するとお姉ちゃんは意外な事を言った。
「あら、何言ってるの? 最初からこの結婚式は鈴音ちゃんの為の結婚式だったのよ?」
「え!? う、嘘っ!」
「もっとも鈴音ちゃんの結婚相手は最後まで誰になるかは未定だったけどね? 亮平君か、もしくは川口さんか。亮平くんは最後まで諦めていなかったわね。ひょっとすると自分を選んでくれるかもしれないって一縷の望みを持っていたみたいだけど……駄目だったみたいね?」
お姉ちゃんはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「え? 一体どういうことなの?」
分からない。今日、この日を迎えるまでに何があったのだろう。直人さんとはあれからろくに会話することもなく、結婚式の準備があるからと引き離されてしまったし、亮平は亮平で姿をまるきり見せないし……。
そして私はいきなり別室へ連れて行かれて、ウェディングドレスを着させられている。
「ほらほら、そんな顔しないの。今日は1年で1番おめでたい日なんだから。笑って?」
「う、うん……」
まぁ、いいか……式が終わった後にじっくり聞けばいいよね?
その時。
―ーコンコン
部屋の扉がノックされて、次に声が聞こえた。
「鈴音……入ってもいいか?」
「え!? 亮平っ!?」
な、何でここに……! なんとなく亮平にはこの姿を見られるのが恥ずかしい。なのにお姉ちゃんは返事をしてしまった。
「どうぞ〜」
「失礼します……」
ガチャリと扉が開かれて、背広姿の亮平が現れた。そしてウェディングドレスを着た私を見て口をぽかんと開けている。
「な、何よ。ど、どうせ似合わないとか思ってるんでしょう?」
視線をそらすと亮平が言った。
「……すごく綺麗だ……」
え? 私は耳を疑った。ゆっくり亮平を見るとその目は見開かれ、私を凝視している。
「亮平……?」
亮平はズカズカ私に近付くと、ピタリと足を止めた。
「鈴音、もう一度言う。お前が好きだ、俺と結婚してくれ」
「は?」
今更何を言われても少しも亮平の言葉は心に響いてこない。それどころかお姉ちゃんまで呆れた顔をしている。
「亮平君……悪いことは言わないわ。鈴音ちゃんの事は諦めなさい。もう完全に振られちゃったのだから」
「ぐはっ!」
亮平はその言葉に胸を押さえる。……お姉ちゃんはなかなかはっきり物を言う。だけどその様子だと、まさか亮平は本当に私の事が好きだったのだろうか?
そこへスタッフの人達が声をかけてきた。
「加藤さん。そろそろ式が始まりますのでこちらへどうぞ」
「あ、は、はい!」
部屋を出ようとした時に、お姉ちゃんに呼び止められた。
「鈴音ちゃん、忘れ物よ」
「え?」
振り向くと、ブライダルブーケを手渡された。白いバラの中に赤いバラが混ざっている。
「綺麗……」
「はい、とっても素敵よ」
「ありがとう……お姉ちゃん」
お姉ちゃんを抱きしめた。
「鈴音ちゃん、幸せになるのよ?」
「うん……!」
私は直人さんの待つチャペルへと向かったー―
式場の入り口にはタキシード姿の直人さんが立ち、私を見ると目を細めた。
「鈴音……とっても綺麗だよ……」
「あ、ありがとう‥‥…」
思わず真っ赤になってうつむくと手を取られた。
「さぁ、行こう。鈴音。もう二度とこの手は離さないから」
「うん。私ももう絶対直人さんから離れない」
直人さんの手をギュッと握りしめ、式場のドアが開かれた――
****
19時――
全ての式が終わり、私と直人さんは海沿いのリゾートホテルのバルコニーで海に沈んでいく夕日を見つめていた。慌ただしい時間が流れ、ようやく2人きりで過ごせる時間が訪れたのだ。
「ねぇ、直人さん」
海を見つめながら隣に座っている直人さんに声をかけた。
「何だい?」
直人さんは優しい眼差しで私を見る。
「もうそろそろ何があったのか、全て話してくれるよね?」
「うん……そうだよね。だけど、その前に……」
突然直人さんに抱き上げられ、部屋に運ばれた。
「直人さん?」
首を傾げるとベッドの上に寝かされ、直人さんが覆いかぶさってくる。
「その前に……鈴音と愛し合いたい。話はその後でもいいだろう?」
「!」
直人さんの言葉に顔が思わず真っ赤になる。だけど……。
「うん、私も直人さんと愛し合いたい」
真っ赤な顔で頷く。
「鈴音……」
直人さんは優しい笑みを浮かべると、唇を重ねてきた。
うん。直人さんの話なら……いつだって聞ける。
だって、私達はもう二度とお互いが離れることは無いのだから。
そして私達は夜が明けるまで愛し合った――
****
多分……私が直人さんと結婚できたのは亮平のお陰なのだろう。
ありがとう、亮平。そしてさよなら。私の大好きだった幼馴染。
私は直人さんと2人で、これからずっと幸せに生きていきます――
<完>
※ side story へ続く……
直人さんの腕が伸びてきて、私をしっかりと抱きとめてくれた。
「直人さん……直人さん……!」
私は泣きながら直人さんの胸に顔を擦り付けた。この匂い……間違いない。直人さんだ……私の大好きな彼の匂いだ……。
「鈴音……今まで本当にごめん……!」
直人さんも泣いているのだろうか? 私の頭に熱いものがポタリと垂れた。しっかり抱き合う私達の背後で亮平の声が聞こえる。
「あ、あの〜鈴音……」
すると直人さんの弟さんの声が聞こえた。
「ほら、行きましょう。2人の邪魔しちゃ悪いですから」
そして足音が去っていくと、直人さんが私から身体を離した。
「鈴音……よく顔を見せてくれないか?」
「う、うん……」
涙で濡れた目をゴシゴシ擦って直人さんを見上げた。すると直人さんは私の頬を両手で挟み込む。
「うん、間違いない……俺の大好きな鈴音だ……」
「な、直人さん……」
そのまま顔を近づけてきたので、私は目を閉じると直人さんがキスをしてきた。
直人さん……。
教会の鐘が響き渡るまで、私達は固く抱きしめあったままキスをした―――
やがて、長いキスが終わると直人さんが言った。
「鈴音……。もう離れない。どうか俺と結婚して下さい」
勿論、私の返事は決まっている。
「うん……! 私を……貰って下さい!」
そして再び私達は抱きしめあってキスをした――
****
午前9時半――
慌ただしく、私と直人さんの結婚式の準備が進められていた。鏡の中に映る私は、あの時試着したウェディングドレスを身に着けて、頭には真っ白なヴェールを被っている。
「鈴音ちゃん。とっても綺麗よ」
鏡の中に紺色のセレモニードレスを着たお姉ちゃんが映った。
「お姉ちゃん……ごめんなさい。本当はお姉ちゃんと亮平の結婚式だったのに……」
私を着付けてくれたスタッフの人達だって、きっと戸惑ったに違いない。するとお姉ちゃんは意外な事を言った。
「あら、何言ってるの? 最初からこの結婚式は鈴音ちゃんの為の結婚式だったのよ?」
「え!? う、嘘っ!」
「もっとも鈴音ちゃんの結婚相手は最後まで誰になるかは未定だったけどね? 亮平君か、もしくは川口さんか。亮平くんは最後まで諦めていなかったわね。ひょっとすると自分を選んでくれるかもしれないって一縷の望みを持っていたみたいだけど……駄目だったみたいね?」
お姉ちゃんはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「え? 一体どういうことなの?」
分からない。今日、この日を迎えるまでに何があったのだろう。直人さんとはあれからろくに会話することもなく、結婚式の準備があるからと引き離されてしまったし、亮平は亮平で姿をまるきり見せないし……。
そして私はいきなり別室へ連れて行かれて、ウェディングドレスを着させられている。
「ほらほら、そんな顔しないの。今日は1年で1番おめでたい日なんだから。笑って?」
「う、うん……」
まぁ、いいか……式が終わった後にじっくり聞けばいいよね?
その時。
―ーコンコン
部屋の扉がノックされて、次に声が聞こえた。
「鈴音……入ってもいいか?」
「え!? 亮平っ!?」
な、何でここに……! なんとなく亮平にはこの姿を見られるのが恥ずかしい。なのにお姉ちゃんは返事をしてしまった。
「どうぞ〜」
「失礼します……」
ガチャリと扉が開かれて、背広姿の亮平が現れた。そしてウェディングドレスを着た私を見て口をぽかんと開けている。
「な、何よ。ど、どうせ似合わないとか思ってるんでしょう?」
視線をそらすと亮平が言った。
「……すごく綺麗だ……」
え? 私は耳を疑った。ゆっくり亮平を見るとその目は見開かれ、私を凝視している。
「亮平……?」
亮平はズカズカ私に近付くと、ピタリと足を止めた。
「鈴音、もう一度言う。お前が好きだ、俺と結婚してくれ」
「は?」
今更何を言われても少しも亮平の言葉は心に響いてこない。それどころかお姉ちゃんまで呆れた顔をしている。
「亮平君……悪いことは言わないわ。鈴音ちゃんの事は諦めなさい。もう完全に振られちゃったのだから」
「ぐはっ!」
亮平はその言葉に胸を押さえる。……お姉ちゃんはなかなかはっきり物を言う。だけどその様子だと、まさか亮平は本当に私の事が好きだったのだろうか?
そこへスタッフの人達が声をかけてきた。
「加藤さん。そろそろ式が始まりますのでこちらへどうぞ」
「あ、は、はい!」
部屋を出ようとした時に、お姉ちゃんに呼び止められた。
「鈴音ちゃん、忘れ物よ」
「え?」
振り向くと、ブライダルブーケを手渡された。白いバラの中に赤いバラが混ざっている。
「綺麗……」
「はい、とっても素敵よ」
「ありがとう……お姉ちゃん」
お姉ちゃんを抱きしめた。
「鈴音ちゃん、幸せになるのよ?」
「うん……!」
私は直人さんの待つチャペルへと向かったー―
式場の入り口にはタキシード姿の直人さんが立ち、私を見ると目を細めた。
「鈴音……とっても綺麗だよ……」
「あ、ありがとう‥‥…」
思わず真っ赤になってうつむくと手を取られた。
「さぁ、行こう。鈴音。もう二度とこの手は離さないから」
「うん。私ももう絶対直人さんから離れない」
直人さんの手をギュッと握りしめ、式場のドアが開かれた――
****
19時――
全ての式が終わり、私と直人さんは海沿いのリゾートホテルのバルコニーで海に沈んでいく夕日を見つめていた。慌ただしい時間が流れ、ようやく2人きりで過ごせる時間が訪れたのだ。
「ねぇ、直人さん」
海を見つめながら隣に座っている直人さんに声をかけた。
「何だい?」
直人さんは優しい眼差しで私を見る。
「もうそろそろ何があったのか、全て話してくれるよね?」
「うん……そうだよね。だけど、その前に……」
突然直人さんに抱き上げられ、部屋に運ばれた。
「直人さん?」
首を傾げるとベッドの上に寝かされ、直人さんが覆いかぶさってくる。
「その前に……鈴音と愛し合いたい。話はその後でもいいだろう?」
「!」
直人さんの言葉に顔が思わず真っ赤になる。だけど……。
「うん、私も直人さんと愛し合いたい」
真っ赤な顔で頷く。
「鈴音……」
直人さんは優しい笑みを浮かべると、唇を重ねてきた。
うん。直人さんの話なら……いつだって聞ける。
だって、私達はもう二度とお互いが離れることは無いのだから。
そして私達は夜が明けるまで愛し合った――
****
多分……私が直人さんと結婚できたのは亮平のお陰なのだろう。
ありがとう、亮平。そしてさよなら。私の大好きだった幼馴染。
私は直人さんと2人で、これからずっと幸せに生きていきます――
<完>
※ side story へ続く……


