君のスガタ
 立ち止まっていた俺はその先に柚がいた。

 鞄を持ち、しょんぼりとした背中が俺の気持ちに突き刺さる。

「柚!」

 俺は名前を呼んだ。

 柚はその声に振り返った。

 けれど、止まらずに再び歩き始めた。

 広い道路で車は数台通るくらいで歩行者は荷台を両手で持ち、腰を屈めている高齢者が歩いていた。

 高齢者は俺の声に肩をビクッととして、少し俺の方を見てから、ゆっくりと歩き続けた。

 柚は俺が青信号になって渡ったら、早足で駆け寄る。

「柚! 止まってよ。話がしたいんだ」

 俺は走る柚に話しかける。

 柚は俺の言葉を無視して、曲り角を曲がった。

 柚を見逃さないように、走るに走って、曲り角で柚を捉えた。

 俺がいることを後ろを振り返り確認した。

 それでも、柚は走り続けた。

「はぁはぁ。柚! 逃げたって構わない。俺は自分の気持ちをまだ言えてない。だから、聞いてほしんだ!」

 俺は精一杯大きい声で柚に伝える。

 その言葉に柚は立ち止まる。

 鞄を両手で持って、ゆっくりと柚が振り返った。

「…っ…話って、さっきの答えですか?」

 柚は小さい声で自信なさそうに俺に言う。

「そう。その話がしたかった」
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