ブルー・ベリー・シガレット



「急かすわけじゃないけど、彼女のひとりくらい紹介してよ」


 先日、久々に会った母親の言葉だ。彼女は基本的に深く考えず言葉を発する人なので隣にいた父がそれを咎めた。


「藤には藤のタイミングがあるよ」


 タイミング、ねえ。父の言葉を小さく舌の上で転がしてみる。

 父と母のようなさながら運命の恋はできる気がしないし、したくもない。ふつうに自立していて、ふつうに趣味があって、ふつうに情緒が安定していて、ふつうに俺を信頼してくれる人がいい。

 収入には拘らないけど、専業主婦はだめだ。家に居てもらうと他の人と触れ合う機会が減って、俺に依存しやすくなるだろうから。

 薄っぺらい条件が折り重なってミルフィーユ。最終的には皿の上で今にも崩れそうな高望みをしている自分に気付く。

 これだから二十九歳になった現在も、まともな恋人さえいないまま独身を貫いていた。


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