ブルー・ベリー・シガレット



 それからは自分の何処かしらが永遠にそわそわし続ける、心ここに在らずといった浮き足立つ生活を送った。だって、同じマンションの住人だ。いつどこですれ違うか分からない。


 そう。諸悪の根源はゴミ捨ての彼女である。


 自分はS寄りだと思っていたが、考えを改める必要がありそうだ。何故なら俺にまったく興味のないあの底冷えする瞳を思い出すだけで、ぞくぞくして嬉しくなるから。

 どんな性格なのだろう。ていうか、何歳? 毎日何している? 何時に帰ってくる? どの部屋に住んでいる?

 顔立ちと声は、めちゃくちゃ可愛かった。ふわっとした柔らかそうな愛らしい見た目で、あの冷たい感じが最高にクる。明らかに俺よりも歳下で二回りくらい小柄なのに、どう育ったらあんなにも飄々と見下すことができるんだ。


 それからしばらくは家にいると落ち着かない気分になった。同じマンションにあの女がいると思うとどうにも心臓が痒い。無視された恥ずかしさを思い出したり、無性にぎゅんと苦しくなったりして居た堪れない。

 だからつい、女の子の家に泊まり込んでしまうことが多くなった。さすがにこの歳になれば、「行為そのものを楽しみたい競技的な女」と「甘い言葉に流されてシちゃうゆるい女」の区別くらいつけられる。

 自己肯定感の低い後者は沼にはまりやすいので、面倒事を嫌うなら前者を選ぶのが吉である。しかし前者に見せかけた後者がいるので、これがまた難しい。

 あと、個人的には後者のほうが可愛いし。がっつく女の子ってあんまり好みじゃない。

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