ブルー・ベリー・シガレット
あはは、かわいい。さっきまで彼氏のことが大好きで、浮気がどうこう言って泣いてたくせに。俺と簡単に浮気しちゃうの、かわいい。
彼氏への復讐ならいいのだけど、調子よく俺に乗り換えようっていうのはあまりお勧めしないかも。
「ここ、出よっか」
だってほら、実際に堕ちてきちゃうと俺は急激に冷めちゃうから。
あーあ、と頭のなかで後悔の溜息を漏らす。
職場内ではなるべく手を出さないようにしていたのに、またヤッてしまったらしい。俺ってほんと節操がない。
連れてきてもらった彼女の自宅は、会社から数駅のデザイナーズマンションだった。小洒落た白い角砂糖のような外観だけど、部屋の中はまあまあ荒れていた。
部屋は心の状態を表すと父は言う。それでいうと俺の部屋は物が少なく殺風景だ。汚く散らかるのは嫌いだけど、インテリアへのこだわりとかも別に無い。確かに心理状態と連動している。
彼女の部屋はゴミや臭いこそないものの、程よく散らかっていて生活感に溢れていた。汚れが染み付いているのではなく、ここ数日で壊れたのだろうと想像できる。そして、その数日間は恋人が訪れてこなかった期間なのだろう。
部屋干しされたままの衣服が妙に生々しかった。でも、こういうのに萌える男っているよね。俺は、女の子の家なんてどうでもいいけど。
さりげなく、しかし堂々と男とのツーショットが飾られている。おそらく彼氏さんであろう写真の中の彼は、いかにも優男といったかんじで癖のない容姿をしている。こういう男が、俺の統計だと意外とモテるし浮気しやすいんだよな。
冷蔵庫にあったビールを飲みかけて、滞りなく行為に及んだ。俺なんかに身体をゆるしちゃうんだ、と高笑いしたくなるのを堪えていた。
「黒羽さん」
「うん?」
「社内の人間とこういうの、よくあるんですか」
「いーや、あなただけ」
わざと甘ったるく耳元で囁いたが、正直にいうと仕事での人と寝るのは初めてではない。ただ、いまの社内にはいないってだけ。
なるべく弊社の外の人を選ぶようにしている。それにみんな、俺にハマって辞めていくから。あるいは、そういう人って寿退社しがちだし。
ていうかこの人も、恋人の浮気疑惑であんなに仕事が遅くなるならさっさと寿退社すべきかも。俺が促すことではないけど。