ブルー・ベリー・シガレット
高校生にもなると、身の振り方がわかってきた。俺は恋人なんてものはつくらないほうがいい、自分の為というよりも相手の為だ。誰かひとりを特別にしようとすると俺に依存させてしまう。
よって、一人に絞らず不特定多数の女の子と関係を持つようになった。こうして言葉にすると最低なかんじは否めないが、ほんとに、相手のためをおもってのことである。
しかしながら案の定この作戦は失敗に終わった。特定の恋人をつくらないことによって、「私って何番目なの?」女が量産されたのである。
たしかに俺が悪いと思う。気が向いた時にさくっと関係を持ち、気が向かない時にはメッセージの返信も滞る。中途半端に期待させるといけない、「したかっただけなので」という意思を明確に提示したほうが潔いという俺なりの良心だ。
うん、やっぱり最低だったかもしれない。こんな最低な男にずぶずぶと嵌っていく女性たちのなんとまあ多いこと。
あるとき、行為を終えた年上の女性が身なりを整えながら言った。
「藤くんは飴と鞭の使い方が上手なのよね」
わざとらしいほど清楚に見える会社勤めの彼女が隠し持っていた煙草をポーチから抜き取って、俺はその一本をそっと咥えた。
この女の人は煙草を拝借させてくれる。自分で買いたくなるほど喫煙を好みはしなかったが、情事の後に味わう独特な苦味は筆舌にしがたい娯楽だった。
未成年の俺を咎めることもなく、彼女が慣れた手つきでライターの火をつけてくれる。肺いっぱいに毒を満たしながら、俺が煙草を覚えたのはいつだったろうと振り返る。
ふーっと煙を吐き出しながら俺は首を傾げた。
「飴と鞭?」
「そう。冷たくされたりひどくされたりすると、自分より立場が上の良い男って思っちゃうのよ」
「ふうん? マゾいねえ」