ブルー・ベリー・シガレット
大学生になると、すでに諦めの境地に立っていた。どうしようにも俺は女の子を狂わせてしまう、そんな星のもとに生まれたらしい。
だからなるべく誰にも迷惑を掛けぬよう、来るもの拒まず去るもの追わずの姿勢でのらりくらりと生きていこうとしているのだが相手がそうとは限らない。
「もう、藤くんがなに考えてるのかわかんないよ」
ていうか、だいたいの女の子はこんなかんじで泣き喚く。愉しいところで終わればいいのに、甘い時間を現実にまで引き伸ばしてこようとする。
ついさっきまで幸せそうに抱かれていた彼女は、たった数分後にしくしくと泣きながら悲劇のヒロインになりきっていた。突っ込まれておかないと、精神が保てないシステムなのかもしれない。気の毒だな。
失礼なことを考えていると女の子は上目遣いに睨みつけてきた。
「こんな面倒な私のことなんて、嫌いだよね」
「いや、好きだけど」
慣れた答えをまっすぐに返せば、些か安心したように彼女の表情が和らいでゆく。分かり易い変化を見下ろしつつ、せっかく安心できたのだからもうやめればいいのになと他人行儀に考えた。
だけど、情緒が乱れている女の子は躊躇なくさらに踏み込んでくるから厄介だ。
「じゃあ、どうして彼女にしてくれないの?!」
擦り切れるくらいに聞き慣れた台詞である。もう味がしなくて面白みもない。
ふつう、こういうことを聞いてくる女を彼女にしたいとは思わないだろ。少なくとも俺みたいな奴は。あーあ、なんかもう完全に冷めてしまった。
「好きだけど、彼女にしたいほど好きじゃない」
吐き捨てるよう正直に答えるだけ答えて、俺は裸のままベッドを抜け出した。
俺が喫煙者になった原因ってストレスでしかないと思う。まあ、そのストレスの根元を辿れば自分にあるのだが。深い溜息をつきながら、ケースから器用に一本だけ抜き出したそれに火をつける。