別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「相変わらず、可南子は俺を買いかぶりすぎだよ。俺はいつも自分の気持ちしか優先していない」

 聞き覚えのある切り返しに戸惑いが隠せない。けれど綾人の顔は真剣そのものだ。

「付き合っていたとき、俺はいつの間にか自分のことばかりで可南子のことをちゃんと大事にできなかった」

 彼の発言に心臓が早鐘を打ち出す。

「別れを切り出されたときも、どうしても物理的に離れないとならなくて可南子を引き止められなかったことをずっと後悔しているんだ」

「ど、どうしたの? 綾人が後悔とか気に病む必要なんてなにもないよ。私も悪かったから」

 違う。私も、じゃない。私が悪い。私のせいで彼を一方的に傷つけて――。

「結婚しよう」

 幻聴か聞き間違いを疑う。

 今、なにを言われた?

「可南子を愛している。今度こそ大事にするからもう一度俺とやり直してほしいんだ」

 どうやら夢でも幻でもないらしい。とはいえ素直に受け入れられるわけがない。

「な、なに言ってるの? 綾人、結婚したんじゃないの? 婚約者は?」

 混乱のまま返すと、綾人は不満そうに眉をひそめた。

「なんの話だ? そんな存在いない」

 嘘! 反射的に叫びそうになったのをぐっと堪え、冷静さを取り戻す。
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