別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「俺が出ていったらちゃんと戸締まりしろよ」

「わかってるよ」

 なにげなく返して、不意に付き合っていた頃を思い出す。私のアパートから帰るとき彼はいつも鍵をかけるように告げ、今のやりとりはお決まりだった。そのあとは、いつも――。

 思い出が頭の中を駆け巡っていたら、ふと綾人と目が合う。続けてさり気なく顔を近づけられ、唇が重ねられる。抵抗する間も、なにかを考える余裕もなかった。

 それどころか、懐かしい感触と温もりに受け入れてしまいそうな自分に胸が張り裂けそうになる。唇が離れ、綾人はなにも言わずそのまま出ていった。私はしばらくその場を動けず、混乱する頭を抱える。

 なにこれ、夢? 綾人は、まだ私を想ってくれている? 結婚って本気なの?

いろいろありすぎて整理できない。大きくため息をついて、軽く両頬を叩いた。とにかく、そろそろ凌空を起こそう。これ以上寝たら、夜寝られなくなっちゃう。寝室に向かい、眠っている凌空を起こす。

「凌空、起きて! お昼寝は終わりだよ」

 その一言でぱっと目を覚ますなら苦労しない。これが保育園と家の違いでもある。

 腰を落として、凌空の体を直接揺する。

「凌空、起ーきーてー」

 声をかけながら、凌空の寝顔に綾人の寝顔が重なった。心臓が大きく跳ね、鼓動が速くなる。

 綾人、凌空を見てもなにも感じなかった?

 普段から自分の顔を意識していなければ、こんな小さい子どもに対して自身と似ているなど思わないだろう。まして綾人は、最初から凌空を他の男性との子どもだと思っているわけだし。

 そう結論づけて、ホッとしたのと同時に罪悪感も覚える。凌空に対してもだ。わからない。私の行動は正しいの? 綾人も凌空もなにも悪くないのに……。

 不安で押し潰されそうになり、ぎゅっと身を縮めた。
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