別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子は、いつも人のことばかりじゃん。私と遊ぶときもいつもこっちの希望とかまずは聞いてくれて、そういう思いやりのあるところは可南子の魅力のひとつだと思うよ。でも、もっとわがままとか可南子の気持ちも言ってもいいんだから」

 それは今までに莉愛から何度も言われたが、無理をしているわけではなくこういう性分だ。けれど、莉愛は納得していなかったらしい。

「可南子の性格はわかっているつもり。そんなとき可南子が進藤くんを頼れたらいいなって」

 莉愛の思いに胸が熱くなる。それと同時に莉愛に心配をかけてしまっていたのが申し訳ない。

「ありがとう。でもまだ付き合いだしたばかりで、そもそも私、男の人と付き合うのも初めてだからどうなるかわからないけど、いい関係を築けるように頑張るよ」

「だーかーら、頑張らなくていいの!」

 莉愛の切り返しに、お互い顔を見合わせつい噴き出した。あとからこの一連のやりとりを私に内緒で綾人に伝えられ、次に会ったとき、綾人から必要以上にフォローされた。

「俺は簡単な気持ちで可南子に付き合おうって言ったわけじゃない」

 真剣な彼に逆に私がたじろいでしまう。でも、そうやってきちんと言葉にしてくれる綾人にたくさん救われた。対照的に自分の気持ちや希望を言うのが苦手な私は、そんな彼に甘えっぱなしになっていたのかもしれない。

 不安な気持ちのまま始まった交際は意外と順調に進み、社会人になっても付き合いは続いた。

 会える頻度も減ったけれど、とくに不満はない。けれど社会人になったからなんとなくこの先――結婚について少しだけ意識するようになった。
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