別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 私も誰かにとって心に残る作品を作りたい。私の今の仕事に対する思いは、ある意味両親のおかげで生まれたものだ。

 とはいえ忙しい父と母を子どもの頃は寂しさもあって恨んだりもした。仕事柄、家族で遠出の旅行をした思い出はない。夏休みなどの長期休暇明けに、同級生がお土産をくれながら旅行した話をされるのがつらかった。

『私も飛行機、乗ってみたい』

『可南子は高いところが怖いから無理でしょ』

 ぽつりと呟いた願望は姉によってあっさりと打ち砕かれる。けれど高いところが苦手なのは事実なので、そういうものなのかと素直に受け入れた。所詮はないものねだりだ。

 成長するにつれ、反抗期も多少あったが家族のために働く両親には感謝している。

 地元のメディアに取り上げられ、多くのお客さんで賑わうレストラン『カルペ・ディエム』を、両親と共に誇らしく思うようになった。働く両親の姿はカッコイイし、やってくるお客さん、結婚式のときも、みんな笑顔だ。

 誰かをあんなふうに幸せにできるのはすごい。

 両親のおかげで姉も私も大学まで行かせてもらい、一人暮らしもさせてもらった。社会人になったのだから、これから少しずつでも親孝行をしていきたい。

 そんな思いで久々の実家に帰ると、両親は仕事中でおらず、先に帰省していた姉が出迎えてくれた。緊張しつつ座ると、向かい側に腰を下ろした姉が切り出す。

「お父さんとお母さん。お店やめるかもしれないの」

「え?」

 青天の霹靂だった。どこか体が悪いのかと問い詰める前に姉は続ける。
< 55 / 189 >

この作品をシェア

pagetop