別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子、大林(おおばやし)さんって覚えてる?」

「大林さん?」

 まったく脈絡のない人物の名前についおうむ返しをした。しかし彼のことは知っている。父の恩人らしく、料理ばかりの父とは違い商売っ気のある人で、レストランをオープンしたのも彼の手腕が大きかったらしい。

 父と共同経営者となり、系列店のお店の出店などは大林さんが仕切っていると聞いた。

「あの人が手がけてたカルペ・ディエムの系列店の三店目。オープンを目前に急に手を引くって言いだしてね」

 続けられた内容に目を剥く。系列店のオープンは年明けすぐの予定で、告知もあちこちでしているはずだ。

「え、なに? なにかトラブルでもあったの?」

 父と大林さんとの間でなにか仲がこじれるようなことがあったのか。しかし、姉は静かに首を横に振った。

「お父さんは心当たりはないみたい。でも系列店のオープンから手を引くのは理解できたとしても、中川(なかがわ)さんを引き抜いて二号店さえ経営が危うくなりそうな事態になっているの」

「なにそれ! なんで中川さんを!?」

 中川さんは父の元でずっと料理の腕を磨いてきて、レストラン二号店のシェフを務めている。彼がシェフではなくなるならカルペ・ディエムの名前は使えないほどの人物だ。

 手のひらを返したような大林さんの行動にショックを受ける。

「お父さんたちも抗議したみたいだけれど共同経営者であり出資者として、お父さんのやり方に疑問を抱いているとか突然言いだしてね」
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