別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「そんな……前々からなにかあったの? それにしてもやり方がひどくない?」

 あまりにも理由がはっきりしない。納得できるはずもなかった。父も同じだろう。

「けれど、お父さんの様子がどうもおかしくて。お母さんもなんだけれど。あんなに大林さんに怒っていたのに、急に先方の言い分に従うとか言いだして……」

 詳しく話さない両親に痺れを切らした姉は、ついに店を訪れた大林さんに今回の件を直接聞いたらしい。姉の行動力は相変わらずすごい。しかし感心する私とは対照的に姉の表情は曇った。

「大林さん、自分の息子と可南子が結婚するなら、身内になるし今まで通り共同経営者として出資を続けるって。なんなら中川さんの引き抜きもやめる。それらに関して契約書を用意してもいいって」

 あまりにも予想だにしない大林さんからの条件に、信じられない気持ちでいっぱいになる。結婚? 私と?

「お父さん、お母さん。そんなことはさせられない!って突っぱねたらしいの。だったら手を引くっていう大林さんを、もう引き留めるのは諦めたみたいで……」

 大林さんから同年代の息子がいるという話は聞いたことがあるが、接点どころか直接会ったことさえない。

「なに、それ……」

「そこまでして息子を結婚させたいってことなのかしら」

 姉はぽつりと呟き、笑顔を向けてきた。

「心配しなくても私が結婚するわ。だって身内になるために結婚するなら可南子じゃなくて私でもいいはずよ」

「でもお姉ちゃん、彼氏いるじゃない! 結婚するって」

 姉の提案に私は噛みつく。こんな冗談みたいな一方的な話に乗る必要なんてない。
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