別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「本人に聞いたの。綾人と川嶋さん、昔から親交があって婚約者として両家公認なんだよね? 綾人がアメリカに行ってもたびたび会いに来てくれていた? 美人で、家柄も釣り合う彼女なら、誰よりも綾人の立場を理解して支えられるから……」

 別れてから何年も経って、今さらなにを言っているんだろう。本来は別れる前にするべき会話だった。向き合うべきだったのに。

「確かに彼女は幼少の頃から知っていて親交はあった。可南子の言う通り、付き合っていたよ」

 わかっていたことなのに、改めて綾人から告げられる事実に、傷ついている自分がいる。でもそんな資格、私にはとっくにない。

 これ以上聞いても不毛だ。過去は変えられないし、彼との未来の結論は決まっている。

「うん。だから、綾人は川嶋さんと」

「彼女とは結婚もしなければ婚約者でもない。俺が自分から付き合いたいと思ったのも、結婚したいのも可南子だけだ」

 結論をまとめようとした私の声に、綾人の迷いのない声がかぶさる。

「彼女と付き合ったのは、本人の強い希望と彼女の父親からの期待があったからで、俺はどこか冷めていた。うまくいかないのは当然だな。おかげで交際はすぐに終わったし、彼女との結婚もありえないと思ったよ」

 珍しくなんとなく自虐めいた言い方だった。次の瞬間、彼が私との距離をさらに詰めてくる。

「後にも先にも俺が欲しいのは可南子だけだ」

 なにか答えるどころか瞬きひとつできず、綾人から視線を逸らせない。
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