エリート外交官は溢れる愛をもう隠さない~プラトニックな関係はここまでです~
「ごめん、なさい……あの、今度からはちゃんと、相談とか……えと、朔夜さんを、頼ります」
「ああ。頼むから、俺にきみを守らせてくれ」


 不謹慎だと理解しつつ、けれども反射的にドキリと心臓が高鳴った。

 セリフだけ切り取ったら、まるで恋人にでもかけるような熱烈すぎる発言だ。“友人の妹”という微妙な関係の私なんかに、こんなためらいもなく使うものじゃない。

 男性経験がほとんど皆無な私には刺激が強すぎて、朔夜さんに他意はないとわかっているのに自然と頬が熱くなる。
 もうまっすぐ彼の顔を見ることができない私は目を逸らし、ただ小さくうなずいた。

 とりあえず満足したのか、朔夜さんは身を起こして椅子へと座り直す。

 近すぎた距離が開いたことに安堵して、私はひそかにホッと息を吐き出した。


「さっきの……泉さんは、陽咲のとこの社長の奥さんだそうだな」
「あ、はい」


 ポツリと彼がこぼした言葉に、首肯して答える。

 朔夜さんは自らのひざの上で両手を組むと、わずかに表情をやわらげた。


「いい人そうだな。ああいう人が同じ会社で、安心した」
「……はい。本当に、助けられてばかりです」
「きみはいつもがんばりすぎだから、しばらく休職するのは俺も賛成だ。好きなことをして過ごしながら、ゆっくり身体を休めるといい」


 穏やかな声音で話す朔夜さんに、またコクリと首を動かして「はい」と返す。

 ゆっくり、かあ。二ヶ月の休みなんて、初めてだ。
『好きなこと』……なにがあるか、今は思いつかないな。
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