エリート会長は虐げられ秘書だけを一途に溺愛する
「結局神崎グループが買収した。ただ一人の反対を、なかったようにして扱い、そこにあった大事なものさえ奪ってしまった。それは、君の父親が大事にしたかった想いのはずだ」
守ろうとしていた。私だけではなく、先祖の人たちが残してくれたものを。
それを守れなかった悔しさは一体どれほどのものだったのだろう。
娘に隠し、必死で働き続けてくれていたことを私は知ろうとしなかった。
「解体当日、君の父親は現場に来ていたよ。ただ静かに見ていた」
辛かったはずだ、と神崎さんは静かに言った。
どんな気持ちで見ていたのだろう。崩れていくものを、壊されていくものを、どう受け止めていたのだろう。父にあったのは悲しみだけだっただろうか。
『仮に強行突破するような事態にでもなれば、このプロジェクトは白紙にする』
ふと、神崎さんが言っていた言葉を思い出す。
「……もしかして、今朝仰っていた地方のプロジェクトは、父のことがあったからですか?」
「そうでもない。ただ俺の意志に反するだけだ」
ふっと笑ったその顔を見て、初めて神崎さんを近くに感じられた。
こんな風に笑う人なのか。そう思うと同時に、婚約の二文字がちらついていく。
「”娘の将来を守りたかった”といった君の父親に、俺が責任を取ると誓った。それがどういう手段になるかは決めかねていたが、君と婚約することが一番だろうと判断した」
いい加減なものではなかった。
父は私の未来を案じて、幸せになれるようにと祈ってくれていたのだ。その祈りに、千隼さんはわざわざ契約という言葉を使い、必死に応えようとしてくれた。そんなことすら知らずに、私だけが一人のうのうと生きていた。
「……あの、どうして私と結婚を……? 今日初めて会ったばかりですし」
千隼さんという人であれば、いくら契約があったとしても、それを破棄することも、別の女性を探すことだって容易だったはず。
「言ったつもりだ。君だから受け入れたと」
「ですが、なぜ私のような人間を」
「愛しているからだ」
「……え?」
「君を愛してる。それ以外に理由が必要か?」
守ろうとしていた。私だけではなく、先祖の人たちが残してくれたものを。
それを守れなかった悔しさは一体どれほどのものだったのだろう。
娘に隠し、必死で働き続けてくれていたことを私は知ろうとしなかった。
「解体当日、君の父親は現場に来ていたよ。ただ静かに見ていた」
辛かったはずだ、と神崎さんは静かに言った。
どんな気持ちで見ていたのだろう。崩れていくものを、壊されていくものを、どう受け止めていたのだろう。父にあったのは悲しみだけだっただろうか。
『仮に強行突破するような事態にでもなれば、このプロジェクトは白紙にする』
ふと、神崎さんが言っていた言葉を思い出す。
「……もしかして、今朝仰っていた地方のプロジェクトは、父のことがあったからですか?」
「そうでもない。ただ俺の意志に反するだけだ」
ふっと笑ったその顔を見て、初めて神崎さんを近くに感じられた。
こんな風に笑う人なのか。そう思うと同時に、婚約の二文字がちらついていく。
「”娘の将来を守りたかった”といった君の父親に、俺が責任を取ると誓った。それがどういう手段になるかは決めかねていたが、君と婚約することが一番だろうと判断した」
いい加減なものではなかった。
父は私の未来を案じて、幸せになれるようにと祈ってくれていたのだ。その祈りに、千隼さんはわざわざ契約という言葉を使い、必死に応えようとしてくれた。そんなことすら知らずに、私だけが一人のうのうと生きていた。
「……あの、どうして私と結婚を……? 今日初めて会ったばかりですし」
千隼さんという人であれば、いくら契約があったとしても、それを破棄することも、別の女性を探すことだって容易だったはず。
「言ったつもりだ。君だから受け入れたと」
「ですが、なぜ私のような人間を」
「愛しているからだ」
「……え?」
「君を愛してる。それ以外に理由が必要か?」