エリート会長は虐げられ秘書だけを一途に溺愛する
ここの家を訪れてから、初めて千隼さんの部屋に入った。
とても広く、無駄なものは一切置かれていない。大量にある本も綺麗に整頓され大きな本棚に収納されている。国内のものから、あらゆる言語の文字がそこに並んでいる。
部屋の一角に、これまた大きな黒いベッドがある。そこで静かに眠るのは、ついさっきまで私を突き放そうとした人。
近付くと、ベッド脇にある棚に見覚えのあるシルエットを確認する。
「これ……あのクマのぬいぐるみ?」
私の部屋にあるクマよりもずいぶんと小さいものが置かれている。この部屋とはミスマッチだ。千隼さんの趣味なのだろうか。
このままどうするべきか。悩んだ末に、近くにあった椅子をベッドへと持っていき、傍らで見守っていることにした。
「……無事でよかった」
端正な顔立ち。眠っていると、どことなく幼さを感じるから不思議だ。そのまま魅入っていると、だんだんと眠気に襲われる。
今日は早朝から動いていたこともあるが、何より安心した気持ちのほうが大きい。
瞼が重く、だんだん意識が遠のいていく。ぽすっとやわらかな素材が頬に当たる。いい匂いだ。なんだろう、寝てはいけないのに。
『……すまない、それは買えないんだ』
誰の声だろう。聞いたことがある。
『ああ……いつか買ってやる。お前が大人になるまでには……父さんと約束だ』
お父さん?
なんの約束をしてるの?
私はお父さんと何か約束をしていた?
『──杏子、叶えてもらえたんだな。よかったよ』
大きくて、ごつごつした手が私の頭を撫でる。うれしそうな笑顔。こんな顔、久しぶりに見た。
温かい。ずっと触れていたくなる。離れていかないように、自分の手を重ねたら、その手は思っていたよりも細くて長い。あれ、どうしてだろう。
その体温に触れたことがある。意識がゆっくりと浮上していくのが分かった。
はっと目が覚めたとき、そこには私の頭を撫でる千隼さんがいた。
「起きたか」
「はい……って、申し訳ございません……! お身体のほうはいかがですか」
「問題ない。寝たら回復した」
「そうでしたか……」
気付けば千隼さんの手を掴んでいた。慌てて離そうとすれば、それを拒むようにぎゅっと握られる。
「夢を見ていたのか?」
「……はい、父との約束を……」
ふっと、視線があのぬいぐるみへと向かう。
とても広く、無駄なものは一切置かれていない。大量にある本も綺麗に整頓され大きな本棚に収納されている。国内のものから、あらゆる言語の文字がそこに並んでいる。
部屋の一角に、これまた大きな黒いベッドがある。そこで静かに眠るのは、ついさっきまで私を突き放そうとした人。
近付くと、ベッド脇にある棚に見覚えのあるシルエットを確認する。
「これ……あのクマのぬいぐるみ?」
私の部屋にあるクマよりもずいぶんと小さいものが置かれている。この部屋とはミスマッチだ。千隼さんの趣味なのだろうか。
このままどうするべきか。悩んだ末に、近くにあった椅子をベッドへと持っていき、傍らで見守っていることにした。
「……無事でよかった」
端正な顔立ち。眠っていると、どことなく幼さを感じるから不思議だ。そのまま魅入っていると、だんだんと眠気に襲われる。
今日は早朝から動いていたこともあるが、何より安心した気持ちのほうが大きい。
瞼が重く、だんだん意識が遠のいていく。ぽすっとやわらかな素材が頬に当たる。いい匂いだ。なんだろう、寝てはいけないのに。
『……すまない、それは買えないんだ』
誰の声だろう。聞いたことがある。
『ああ……いつか買ってやる。お前が大人になるまでには……父さんと約束だ』
お父さん?
なんの約束をしてるの?
私はお父さんと何か約束をしていた?
『──杏子、叶えてもらえたんだな。よかったよ』
大きくて、ごつごつした手が私の頭を撫でる。うれしそうな笑顔。こんな顔、久しぶりに見た。
温かい。ずっと触れていたくなる。離れていかないように、自分の手を重ねたら、その手は思っていたよりも細くて長い。あれ、どうしてだろう。
その体温に触れたことがある。意識がゆっくりと浮上していくのが分かった。
はっと目が覚めたとき、そこには私の頭を撫でる千隼さんがいた。
「起きたか」
「はい……って、申し訳ございません……! お身体のほうはいかがですか」
「問題ない。寝たら回復した」
「そうでしたか……」
気付けば千隼さんの手を掴んでいた。慌てて離そうとすれば、それを拒むようにぎゅっと握られる。
「夢を見ていたのか?」
「……はい、父との約束を……」
ふっと、視線があのぬいぐるみへと向かう。