小林、藝大行くってよ
 後期が始まったら、もっと親しみやすさを前面に出していくつもりや。崇高な存在が、実は庶民的やった……このギャップが恋を生むのであるッ!
 そう、ギャップを制する者は恋を制する。大事なことやで。メモしときや。

 ん、ヨネからメッセージや。さっそくインスタをフォローしてくれたな。しかも拡散してくれとるやん。感謝やで。
 おっとぉ、フォロワーが20人になっとるわ。ヨネ効果やな。これからどんどん増えるはずやし、もっと投稿しとこ。
 
 これまで描いた絵はスマホの画像フォルダに入っとるし、定期的に更新することにしよう。いつか、稀代の天才登場に世界が度肝を抜かれる日がくるで。

「ほな、出かけてくるさかい。4時くらいには帰るわ」
 
 アート関係のアカウントを回っとったら、おかんがウキウキした様子で言った。
 
「徳永さんて、男やないやろな」

 玄関でオシャレ靴を履くおかんに訊ねる。

「なに言うてんの。敦史くんのお母さんやで」
「誰やねん、敦史くんて」
「もも組で一緒やったやん。覚えてへんの?」
「幼稚園かいッ! 覚えとるわけないやろ!」

 もも組言うたら、年中のときやんけ。15年前やで。どんな連中と一緒やったかなんて、まったく記憶にないわ。

「そもそも、なんでおかんはずっと付き合いがあんねん」
「別におかしなことちゃうやろ。気が合う人は、ずっとお友達やで」

 うーむ、さすがコミュ力おばけのおかんやな。シャイボーイなおれには真似でけへん。
 とりあえずデートではなく女子会(女子ではないが)とのことなので、快く見送った。

 っちゅーわけで、花道の部屋掃除でもするか。おれに似て綺麗好きやしな。
 かぐわしい落とし物(糞)を片付け、埃を取り、風呂場でケージを水洗いする。丁寧に、丁寧にな。

 花道が、洗面所からおれの様子をじっと眺めとる。かわいいヤツやで。

 実を言うと、ホンマはタイハクオウムやのうてオカメインコを飼うはずやった。おとんが同僚の家でオカメインコを見て、心を奪われたらしくてな。

 そうしてオカメインコを見に鳥専門ショップに行ったときに、まだ雛やった花道と運命の出会いを果たしたんや。

 おとんもおれもオカメインコそっちのけで、花道のあまりのかわいさに虜になってしもた。

 最初は鳥に興味がなかった、むしろ飼うことに反対しとったおかんと姉やんも、ラブリー花道を前にあっけなく陥落。家族全員が、この純白の鳥を溺愛することとなった。

「イッサ、ヤッホー」
「おう、花道。もう少し待っとってなー」
「ホンマヤ、コニチハ」

 相変わらず、花道はおしゃべりやなぁ。そこがたまらなくかわいいんや。
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