小林、藝大行くってよ
 正直、進学で花道と離ればなれになるのは辛かった。それでもおれは、自分の夢のために最高峰の場所で腕を磨く決心をしたんや。

 そやし、こうして帰省したときは存分に構ってやる。花道も、それを望んどるはずやしな。おれには分かる。

 心を込めてケージを洗って乾かしとる間に、花道と戯れることにした。
 おれと似て、花道はダンスが得意なんやで。

「よっしゃ! 久々に踊るで、花道!」

 おれはスマホで動画サイトを開き、曲を流しはじめた。京都が産んだ最高のロックバンド、10-FEETの曲やで。

 アップテンポなリズムに合わせて、花道の前で体を上下に揺らす。すると、ソファの背もたれが花道のステージへと変わる。
 羽を大きく広げ、頭を激しく上下する花道。おれも一緒にヘドバンして、ボルテージはアゲアゲや!

「楽しいなぁ、花道!」
「クエェーッ!」

 久しぶりの花道とのセッション。やっぱり最高やで。以心伝心。おれらの絆、フォーエバー!

「次の曲いくで、花道!」
「クエェーッ!」

 それからしばらく、ふたりで踊りまくった。

 おれがいない間も、おとんやおかんが花道の大好きな曲を毎日かけてくれとるらしい。踊っている動画が定期的に送られてくるが、おとんたちは手拍子をして、かけ声を送るだけや。
 こうして一緒に踊れるのは、おれしかおらん。花道の唯一にして最高のパートナーが、このおれなんや!

 何曲か全力で踊ると、花道は満足した様子で羽の手入れをはじめた。おれもええ汗かいたわ。
 もう昼やし、食いものを調達しに行くか。面倒やさかい、近くのマクドにしよう。ちょうどお月見バーガーも出とることやしな。

 徒歩5分やけど、暑いからチャリや。おれが溶けて減ってまう。
 パッと行ってパッと帰ってパッと食ってから、またインスタのアカウント巡りをすることにした。

 フォローが30人になっとる。フォローしたアカウントがフォロバしてくれたんやな。投稿の「いいね」も順調に増えとるやん。この調子で、いろいろなアート系アカウントとつながるで。インスタとアートは相性がええからな。めちゃくちゃ刺激になるアカウントが、ぎょーさんあるんや。

 ちゅーか、浅尾っちがインスタで作品を載せたらファンが爆増するんちゃうか?
 いや、しかしまだ「おれたちの浅尾っち」でおってほしい感じもする。どっちにしろ、浅尾っちはいずれ必ず世界中から注目される画家になるはずや。みんなの……「世界の浅尾桔平」になるまでは、藝大の同級生でおってほしいっちゅー、かわいい乙女ゴコロ。
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