策略に堕ちた私
 社長はベッドから降りた。

「さあ、仕事だ。あなたにできるのは、これまで通り働くこと」
「は、はい」
「あなたは少し休んでから会社に来てください。バスルームも使っていいし、キッチンのもの、何でも食べていい。ここの場所は出ればわかるから」

 そういうと寝室から出て行った。
 出ればわかる?
 起き上がろうとすれば起き上がれなくもなかったが、社長とは顔を合わせづらく、玄関の閉まる音がするまで待った。
 つくづくいたたまれない。
 私は何をやってしまったのだろう。
 これまで通り働くって言ったけど、それは、これまで通り、社長と部下の関係、つまりなかったことにしてくれるってことよね。
 さすが社長、寛大だ。
 これから、身を粉にして働かなきゃ。
 そう決意する。
 身支度を整えて、玄関を出る。スマートキーが自動的に閉まる。
 ここの場所は出ればわかるって言ってたけど。
 そこはホテルの廊下のような場所で、とりあえずエレベーターを探す。
 エレベーターに入る。
 ん?
 このエレベーターは? 
 それはオフィスのエレベーターと作りが似ていた。
 一階まで降りてみれば、やはりそこはオフィスのあるビルだった。
 社長、オフィスの上に住んでたの?
 それで神出鬼没だったのね!
< 15 / 34 >

この作品をシェア

pagetop