策略に堕ちた私
 社長との外出はとても楽しかった。
 仕事中とは違って、女性扱いしてくれている。
 ドアを開けてくれるし、段差では手を差し出してくれる。
 社長って、こんな人だったっけか。
 無駄に大きい体で、高いところのものをさっと取ってくれる。
 無機質なはずの顔には、照れくさそうな笑みを浮かべて、目には慈しみがこもっている。
 ひねくれたはずの性格も、プライベートでは包み込むように優しい。
 あとは、足らないのは可愛げ(・・・)ぐらい?

 それから社長と私はときおり、いや「しょっちゅう」、ふしだらな関係を持つようになった。
 私の社長を見る目にはときおり物欲しそうなものが浮かんでいるらしく。
 社長室で二人きりになれば、社長にキスを与えられて、もっと物欲しそうな顔になるらしく。

「上に行く?」

 誘われてしまえば抗いようもなく。
 エレベーターに乗るなり、私は社長にもたれかかり、唇を求めてしまう。社長は薄く笑って見返して、キスを与えてくる。
 これって、社長にハマってるよね。
 まだ、社長には可愛げ(・・・)がないから大丈夫。
 まだ、私は大丈夫。
 いつでも抜け出せる。
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