策略に堕ちた私
 会計を終えるまでの待合室で震えているのはスマホではなく自分の手だと気づいた。 
 私の中で芽生えた命。
 産むという選択肢はない。
 仕事もある。
 子どもなんか困るだけだ。
 だから中絶しかない。
 夫婦連れらしいカップルの幸せそうな姿が、憎いほどうっとうしくなる。
 彼らは子どもを育てるのに、私は殺すしかない。
 
 家に帰ると床に座り込んだ。
 床の冷たさに立ち上がった。
 赤ちゃんが寒がる。
 ベッドに居場所を変える。
 ごめんね、せっかく来てくれたのに。
 ごめんね………。
 私は長いことベッドに座り込んだまま、立ち上がれなかった。
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