策略に堕ちた私
 社長は苦しそうな顔つきを向けてきた。
 セフレでもちょっとは惜しいですか。

「俺、何か、やった?」
「社長は悪くありません」

 社長を好きになっちゃった私が悪いだけ。
 好きな人の子を産みたくなった私が悪いだけ。
 泣きそうになるのをぐっとこらえる。
 セフレ相手に泣くのなんか、わきまえのない女だ。
 
「じゃあ、何?」
「…………」
「どうして?」
「…………」
「まいこ!」

 さすが社長、私の名前の読み方、知ってたんですね。
 嬉しい。
 下の名前を呼んでくれた。
 ちゃんと間違えずに呼んでくれた。
 ふふ、私は少しは大切な女性だったんですね。
 
「もしかして、子どもができた………?」

 社長の声に、私は顔を上げた。
 そのことがイエスの返事になるとは気づかずに。

「できたんだね?」
「いいえ」
「でも、今、お腹を触ってる。愛おしそうに撫でている」
「いいえ、ちょっとお腹が痛いだけです」

 社長は私の顔を覗き込んできた。

「ごめん、一人で悩ませてたんだね。まいこ、結婚してほしい」

 はい?!
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