策略に堕ちた私
 そして今、社長室から出た私たちは、社員から祝福を受けている。

「社長、常務、婚約おめでとうございます!」
「ちょっと前から怪しいなって思ってたんです。お二人とも真剣な様子だったからこうなると思ってました」

 どーしてこうなった?!

「結婚式は米子のお腹が目立つ前にささやかに行うつもりだ」

 社長の声に「うわあ、おめでただ!」と歓声が上がる。
 だから、どーしてこうなった?!

 二人きりになったとき、まだ気持ちの整理がつかない私は、社長に訊いた。

「社長、あの、私でいいんですか?」
「まいこ、二人のときは、社長はやめて欲しい」

 社長の少しはにかんだ顔が可愛い。
 じゃなくて。
 婚約者はどうなった?

「ひなたさん、私、ひなたさんに見合うような人間じゃありませんし、ひなたさんには婚約者がいると思っていましたが」

 社長は少しばかり傷ついた顔をした。

「そんなのはいない。親に押し付けられたこともあったけど、きっぱりと断った。米子は俺をそんな男だと思っていたの? 婚約者がいるのに米子とこういう関係を続けるような男だと思ってたの?」

 そう言うひなたさんはペションとしており。
 ごめんなさい、勝手にセフレ関係だと決めつけて。
 思えばずっと失礼な決めつけをしていたのだ。
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