策略に堕ちた私
「では、どうして婚約者はいないと言ってくれなかったんですか。社員にひなたさんは遊び人と思われています」

 私も思ってたけど。

「いつどのタイミングでそれを言えと」

 確かにわざわざ公言するのもおかしな話だ。
 社長はちょっと拗ねたような顔で唇を突き出して言った。

「俺も女性にはだらしなかったけど、米子とこうなってからは、一切ない」

 それはわかる。だって私がほぼ独占してきたんだもの。
 セフレって思ってきてごめんなさい。

「まいこ、好きだよ、愛している」
「ひなたさん……、私も、好き。愛しています」
「まいこ、俺、今、すごく幸せだよ」

 私の胸にも幸せが込み上げてきた。
 やっと実感する。
 私とひなたさんは体だけではなく、心も愛し合う関係であることを。
 そして、お腹には子どもがいる。
 私、とても幸せなんだわ。
 一人で育てると決めたときの悲壮さが嘘のようだった。
 目から涙があふれ落ちる。
 もう日向さんは、涙を見せてもいい相手だ。

「私、幸せ、私もとても幸せよ、日向さん……」

 日向さんの目にも喜びがにじんでいた。
< 31 / 34 >

この作品をシェア

pagetop