気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「だったらこういうのは? もともと調理器具が必要だったが、今まで買い揃えていなかったから、妻にお願いして今日買いに来た。……どうだ?」

「どうって……」

「初めてのデートにしては家庭的すぎたか? でも、いつまでも緊張してほしくはないし――ああそうだ、敬語をやめてもらうのを忘れていた」

 全然言い出さないから忘れてくれたと思っていたのに、嫌なタイミングで思い出したらしい。

 志信さんはにこやかに私を見つめると、自分自身を指さした。

「俺のことはなんて呼ぶんだっけ?」

「志信……さん」

「ん?」

 絶対に聞こえているくせに、聞こえていないふりをしている。

 呼び捨てにしろという圧は決して強くないけれど、真綿でぎゅっと逃げ道をふさがられるような感覚があった。

「……志信」

「いいじゃないか、夫婦らしくなってきた」

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