気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 その直後、「これは必要か?」と大きなざるを差し出される。

「ここまで大きなものは必要ありませんよ。もっと普通のセットで大丈夫です」

「俺も敬語を使おうか?」

「……だって、あなたのほうが年上なのに」

 やんわりと私の逃げ道を奪っていく彼と、どう向き合えばいいかわからない。

「だが、夫婦だ」

 契約の、と彼は言わなかった。ここは外で、誰かが聞いているかもしれないからだ。

 私たちの関係は、明かさなかっただけで長年付き合ってきた恋人同士ということになっている。大規模な事業が一段落したから、ようやく結婚できたのだと。

「志信……さんは、どうしてそんなにすぐ対応できる、の?」

 なんだか変な聞き方になった私がおかしかったのか、ふっと笑われる。

「わかった。そこまで言うなら呼び捨てはしなくていい。でも敬語は頑張ってくれ」

「……うん」

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