気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「最近、つらいと思ったことはありませんか? 妙に嫌なことが続くと思ったことは?」

「……特にありません。大丈夫です」

 私をカモだと認識しているのか、適当に返事をして横を通り抜けようとしても、巧妙に邪魔をしてくる。

 走って逃げたくても、両手にあるジュースのカップがそれを許してくれない。

 もどかしくなっていると、男性はますます距離を縮めて鼻息荒く語った。

「現代人はいろいろな問題にさらされて、自分でも気づかないうちに疲れが溜まっているんです。そこで――」

「優陽、おいで」

 聞き慣れた声が私を呼ぶ。

 いつの間にか近くまで来ていた志信さんが、男性の背後に立っていた。

 こうして人と並ぶと、すらりとした背の高さがよく目立つ。

「失礼。デート中なので」

 志信さんは声を荒らげるでもなく、スマートに言って男性を遠ざけた。

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