気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 さりげなく私の右手からカップを取ったかと思うと、空いた片手を腰に添えてくる。

 こんなふうに触れられるのは初めてで、どきりとしてしまった。

「行こう」

「は、はい」

 思わず敬語になったものの、志信さんは指摘しなかった。

 腰に添えた手に力を込められ、その場から離れようと促される。

「志信さん」

「知り合いじゃないんだろう?」

 一応、といったように確認されてうなずく。

「それならいい。向こうに行こうか」

 背後に男性を残し、志信さんは最初に待っていたベンチとは違う場所まで私を連れて行った。

 木々で陰になっているため人の数は多くないけれど、先ほどより落ち着いて話ができそうな場所だった。

「平気か?」

「うん。よくあることだから大丈夫です」

 持っていた白桃ジュースに口をつけ、甘さを呑み込んでから息を吐く。

「よくあることなのか」

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