気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 そう語る志信さんの口もとには、楽しそうな笑みが浮かんでいた。

 ときどき見せるこの素の笑顔に、いつも胸が騒ぐ。

 私たちの間に男女の愛はないけれど、この顔は素直に好きだと思った。

「そうだ。これ、ありがとう」

 志信さんが手に持っていたカップを軽く上げる。

「グレープフルーツジュースなんていつ振りだろうな。すごくおいしい」

「よかった。甘くないのがいいって言ってたから、これが一番それらしいかなと」

「今思うと、無理難題だったな。ジュースを買いに行くのに、甘くないものがいいなんて」

「私も酸っぱいのは苦手だよ。似たようなものじゃない?」

「へえ、じゃあ純粋に甘いものが好きなんだな。覚えておこう」

 既に半分ほど減ったカップを手に、なんだか機嫌のいい志信さんを見つめる。

「そんなことを覚えてどうするの?」

「妻の好みを把握しておくのは夫の役目じゃないのか?」

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