気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 色とりどりの南国の魚が泳ぐ水槽の前で立ち止まり、懐かしい記憶と景色を重ねる。

「じゃあ、その男はほかに相手が?」

「そう。そっちが本命で私がキープ。たくさんくれたプレゼントも、本命の子に断られたから私に横流ししたものだった」

「最低だな」

「円香もそう言ってくれたよ」

 卒業旅行の少し前、私はほかの恋人たちがそうしているように、こっそり抜け出してふたりの自由行動を過ごしたいと願った。

 ルールを破るような真似はしたくないと言った彼の言葉に反省したけれど、あれはほかに本命の相手がいるから難しいという意味だったのだ。

「私が怒る前に友だちが怒ってくれて、その人の悪行をみんなの前で全部言ったの。そうしたら、前にも似たようなことをしていたみたいでね。旅行中も、卒業を迎えるまでの間も、みんなから白い目で見られてすごく気まずそうだった」

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